挿絵の世界展関連講演「大正ロマン・昭和モダンの叙情画家」を聴いてきました

挿絵の世界展

国立国会図書館で開催中の「挿絵の世界展」。関連講演を拝聴してきたので簡単な感想を残しておきます。

大正ロマン・昭和モダンの叙情画ー夢二・華宵・淳一を中心にー

現在、国立国会図書館では「挿絵の世界展」が開催中です。
挿絵の世界展

印刷・表現技法の発達を受け、大衆文化の移り変わりともあいまって多様化してきた挿絵の世界を、明治の新聞、大正・昭和の少年・少女雑誌、SF小説や時代小説、平成のライトノベルなど所蔵資料約90点でご紹介します。

企画展示「挿絵の世界」

開催期間:
【東京本館】2017年10月10日〜11月11日
【関西館】2017年11月17日〜12月9日

そして関連講演として「大正ロマン・昭和モダンの叙情画家ー夢二・華宵・淳一を中心にー」が開催されました。(現在終了)

弥生美術館学芸員の内田静枝さんが講師として2時間にわたり大正、昭和の叙情画家についてお話ししてくださいました。少女向け雑誌「少女の友」で活躍した4人の叙情画家について知る事ができました。

ネットが無い時代、雑誌は最大の娯楽だった

大正から昭和のネットが無い時代は雑誌が少女たちの楽しみの最もたるものでした。
特に可憐な少女イラスト等、ビジュアル要素は彼女たちの憧れの対象となりました。

恋多き抒情画家 竹久夢二

竹久夢二
大正時代を代表する画家が竹久夢二さん。挿絵画家というより、日本画家のイメージがある人もいるかもしれません。夢二は挿絵にとどまらず、日本画、油絵、木版など幅広く活動していました。
私は夢二の生涯についてあまり知らなかったので、初めて知る事が多く興味深かったです。
夢二といえば美しい女性を描いた美人画のイメージがあると思いますが、身の周りの女性をモデルにしていたそう。

カリスマ抒情画家 高畠華宵

高畠華宵
高畠華宵については、名前は知らなくても絵を見た事がある人は多いかもしれません。
彼も抒情画家としての活動の他、レターパックのイラストを担当し、大ヒットしたそうです。
華宵は存在そのもののカリスマ性が高く、イラストは勿論、華宵自身のファンも多かったそうです。
講演中に、華宵の写真が紹介されていましたが、写真からもカリスマ性が伝わってくるような堂々とした佇まいでした。
「挿絵の世界展」に華宵の絵も展示されていました。着物にタイツとパンプスを合わせたオシャレなファッションの女性が描かれており、こういった挿絵が当時の少女達の憧れの的だったのが窺えます。
現代でもオシャレな着こなしとして受け入れられる素敵なイラストが展示されています。

ファッションリーダー抒情画家 中原淳一

創刊70周年記念それいゆ70企画
中原さんについては以前、記事で紹介したことがあります。
こちら

中原さんは、17歳の時に銀座を歩いていたらファッションデザイナーとしてスカウトされたそうです・・・!
抒情画家になったのもスカウトから始まっているそうで、才能あふれる天才肌の人なのかなと感じました。
講演会場で、中原さんが携わった付録の復刻版も見る事ができました。本当に細かくて細部へのこだわりが伝わってくるものばかり。
現実的に、ここまで凝った付録を企画した事と、採用した出版社との信頼関係も窺えます。コストや、破損のリスクなど考えがちなのに、凄いなと思います。

元祖長編漫画家 抒情画家 松本かつぢ

松本かつぢ

会場にはかつぢさんの娘さんもいらしてました。
短い時間でしたが、どんなお父さんだったか等貴重なお話を聞くことができました。
かつぢさんは、「くるみちゃん」という長編漫画を日本で初めて描いた人です。
元祖長編漫画と言えば、手塚治虫さんと思われがちですが、その20年前にかつぢさんが描いていたのでした。かつぢさんは様々なタッチで描くことのできる方です。講演では、可愛い系もシリアスなタッチも幅広く紹介されていました。

最後に

2時間に渡り貴重なお話を聞くことができました。
開催中の「挿絵の世界展」では90点もの資料が展示されています。
挿絵の始まりから、現代にいたるまでの流れを知る事ができます。
グラフィックや、イラストレーターの歴史にも触れており、各業界の大先輩の作品が展示されていました。イラストレーターはグラフィックから派生したものらしいです。知らなかった!
東京では2017年11月11日まで開催中!