[映画レビュー]護られなかった者たちへ

舞台は東日本大震災から10年目の宮城県仙台市。
全身を拘束された状態で餓死させられるという不可解な事件が起きた。
事件の裏に隠された哀しい真実とは…。

※本レビューにはネタバレが含まれています。

あらすじ

東日本大震災から10年目の仙台で、全身を縛られたまま放置され”餓死”させられるという不可解な殺人事件が相次いで発生。
被害者はいずれも、誰もが慕う人格者だった。
捜査線上に浮かびあがったのは、別の事件で服役し、刑期を終え出所したばかりの利根(佐藤健)という男。
刑事の笘篠(阿部寛)は、殺された2人の被害者から共通項を見つけ出し利根を追い詰めていくが、決定的な証拠が掴めないまま、第3の事件が起きようとしていた。
なぜ、このような無残な殺し方をしたのか?利根の過去に何があったのか?
(映画:護られなかった者たちへ 公式サイトより引用)

震災後の仙台と生活保護というリアリティ

舞台が日本で、しかも東日本大震災という実際に起きた出来事がベースになっている。家族を失った人、困窮した生活、不十分な支援…。

連続餓死事件はフィクションであるが、災害、貧困、生活保護などリアルな日本を映し出している。国、あるいは身内に迷惑を掛けたくないと生活保護を辞退する人。生活保護だけでは賄えずに一家心中を起こす人。不正受給の闇。

作中に「私たちはそういう国に住んでいるという事です」という福祉センター職員のセリフがある。
現実問題として私たち1人1人が考えなくてはならない。映画の中の作り話として見れないはずである。

利根勝久の気持ちの変化

東日本大震災で被災し、親を亡くした少女の幹ちゃん(石井心咲)、独居老人の遠島けい(賠償美津子)と身を寄せ合う利根。

親の愛情を受ける事なく育ち、感情表現が乏しい利根だったが、大雨のある夜「俺、生きていて良かったのかな」と遠島けいの前で号泣する。普段感情を一切見せない利根だが、突然爆発する不安定さを抱えている。

しかし、幹ちゃんと遠島けいとの交流の中で少しずつ笑えるようになり、2人には心を開くようになる。
何を考えているのか分からない不気味な男のように見えるが、2人の前では優しい青年だということが窺える。

利根を演じる佐藤健さんは「心に傷を抱える青年」の演技がピカイチ。るろうに剣心 The Biginningの緋村剣心役も是非観てほしい。

死んで欲しくないんだよ!

利根が遠島けいに対し「家族のように想っている」「死んで欲しくないんだよ!」と生活保護の受給を迫るシーン。不器用故か、ストレートな言葉が心に刺さる。震災時にけいに救われた事で、3人は家族以上に家族になれたのかもしれない。

クライマックスで幹ちゃんを諭す利根の表情、仕草、声に、彼の繊細さや優しさが溢れている。

大切な人を護りたい 哀しい真相

事件は解決を迎えるが、「悪いのは誰?」という視点で見ると行き場のない感情を覚える。

みんな大切な人を護りたくて必死だった。

護りたかったのに 護れなかったから。

福祉センターの職員達も見殺しにしたかったわけではない。
震災後の混乱の中、極限状態で皆必死に生きていた。

それぞれの立場でみんな必死だった。みんな誰かを護ろうとしていた。

護られなかった者達へ

失われて良い命は1つもない
どんな理由があろうと、どんな恨みがあろうと、失われて良い命は無い。

この事件を本当の意味で解決するには、私たち一人一人が考え行動する必要がある。日本は今や貧困国で生活保護を必要としている人で溢れている。

幹ちゃんの最後のメッセージは私たちにも訴えかけているに違いない。

「声を上げてください できるだけ大きな声を」

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