前回の記事「知らなきゃヤバい!?下請法-前篇」で下請法の概要についてまとめました。今回は具体的に親事業者の義務と責任についてです。
どのような事をしたら違反になるのか、円滑な取引を行うために大切な事ですので是非一読して下さい。
下請法:親事業者の義務と禁止事項
親事業者の4つの義務
下請法の定義が分かったところで、具体的に守らなくてはならない事をまとめてみました。
親事業者には次の4つの義務があります。
- 書面の交付義務・・・下請取引へ発注をする際は、直ちに発注書面を交付すること。
- 支払期日を定める義務・・・下請代金の支払い期日を発注物の受領後60日以内に定める事
- 書類の作成・保存義務・・・下請取引の内容を記載した書類を作成し、2年間保存する事
- 遅延利息の支払義務・・・必ず支払いましょう。
細かく見ていきましょう。
1.書面の交付義務
口頭やメールで注文し、そのまま物品を受領したら違反になる場合があります。必ず注文書を発注しましょう。また、納期の記載は必須です。
この規定に違反すれば50万円以下の罰金に処せられます。
書面に記載すべき内容
- 親事業者及び下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可
- 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
- 下請事業者の給付の内容
- 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,役務が提供される期日又は期間
- 下請事業者の給付を受領する場所
- 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は,検査を完了する期日
- 下請代金の額(算定方法による記載も可)
- 下請代金の支払期日
- 手形を交付する場合は,手形の金額(支払比率でも可)及び手形の満期
- 一括決済方式で支払う場合は,金融機関名,貸付け又は支払可能額,親事業者が下請代金債権相当
額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日 - 電子記録債権で支払う場合は,電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日
- 原材料等を有償支給する場合は,品名,数量,対価,引渡しの期日,決済期日及び決済方法
※書面の様式に規定はありませんので、独自のフォーマットで問題ありません。
納期が確定していない場合
大規模案件の場合、発注の時点で納期が確定していない場合がありますよね。発注後に要件を洗って仕様を固める場合も多いと思います。
このような場合は、内容が定められない理由や仕様が確定する予定期日を記載した書類を作成する必要があります。
つまり如何なる場合でも書類の交付は必要と言う事ですね。
「長い付き合いだから口頭で分かるよね?」ではいけません。口約束はトラブルの元。
納期以外の事柄についても「正当な理由がある場合」は、同様の手続きが認められます。
下請金額が確定していない場合
納期同様、金額についても決定していない場合もありますよね。正当な理由がある場合は、以下の要件を備えた算定方法での記載が認められています。
- 請代金の具体的な金額を自動的に確定するもの。
- 注書面とは別に算定方法を定めた書面を交付する場合は,これらの書面の関連付けを行うこと。
下請代金が確定した後は、速やかに確定金額での書面を交付して下さい。
2.支払期日を定める義務
納品後60日以内の出来るだけ短い期間にに全額支払う必要があります。遅れた場合は遅延利息を支払う義務が発生します。
事業者間で「60日を超えても良いよー」と合意があった場合でも、60日を超えると違反になりますので注意。繰り返しますが強行法規という事を忘れないように。
3.書類の作成・保存義務
取引に関する書類は2年間保存しなければいけません。これらの書類は公正取引委員会や中小企業庁の調査にも役立ちます。
4.遅延利息支払い義務
遅延した場合は、必ず利息を払いましょう。
親事業者11の禁止事項
親事業者には11の禁止事項が定められています。これは下請事業者の合意があっても抵触すると違反になりますので注意して下さい。
- 受領拒否・・・注文した物品等の受領を拒むこと
- 下請代金の支払遅延・・・下請代金を物品等の受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないこと
- 下請代金の減額・・・あらかじめ定めた下請代金を減額すること
- 不当返品・・・下請事業者に責任がないのに、受け取った物品等を返品すること
- 買いたたき・・・類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に強制すること
- 購入・利用強制・・・親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること
- 報復措置・・・下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由として,その下請事業者に対して,取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをする
- 有償支給原材料等の対価の早期決済・・・有償で支給した原材料等の対価を,当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせた
りすること - 割引困難な手形の交付・・・一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること
- 不当な経済上の利益の提供要請・・・下請事業者から金銭,労務の提供等をさせること
- 不当な給付内容の変更及び不当なやり直し・・・費用を負担せずに注文内容を変更し,又は受領後にやり直しをさせること
下記リンク先PDFには各項目詳細が説明されています。
まとめ
「費用を負担せずに不当なやり直し」とかあなたの周りにはありませんか?必ず書面は交付していますか?
知らない内に違反していたなんて事にならないように気を付けましょう!
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