日本最後の紅屋「伊勢半本店 」で紅色の歴史に触れてきました

日本最後の紅屋「伊勢半本店 」で紅色の歴史に触れてきました

以前「 赤色の歴史・染料・価値観について – 日本の伝統色を探る – 」という記事で、日本の伝統色「赤」についてまとめました。今回は、赤の中でも「紅色」についてご紹介します。
日本に残る最後の「紅屋」、伊勢半本店さんの紅ミュージアムを見学してきました!

伝統を繋げる為に。 紅屋さんによる紅ミュージアム

今回、足を運んだのは、紅屋「伊勢半本店」さんが運営する紅ミュージアムです。
日本に残る唯一の紅屋さんで、「伝統の紅」を伝える為、常設展や企画展が開催されています。

伊勢半本店 紅ミュージアムは、紅の歴史と文化、そして江戸から続く紅屋である当社が、創業時から今日まで守り続けている紅作りの「技」を伝えるためのミュージアムです。

伊勢半本店 紅ミュージアム

今回は常設展のガイドツアーに参加させて頂きました。約40分間、展示資料と歴史・文化背景を見学する事ができます。

品質にこだわる伊勢半本店の紅

京都や大阪を中心に作られていた紅ですが、化粧文化の発展により江戸にも普及します。
江戸後期の1825年、東京都日本橋に紅を製造・販売する紅屋として伊勢半本店が誕生しました。品質にこだわり、美しい玉虫色を作り上げる伊勢半の紅はたちまち評判となりました。
昭和前期までは皇室ご用達として愛用されていたそうです。
見学ツアーでは、美しい玉虫色の紅を実際に見せて貰えますよ。

食紅、化粧、絵画・・・様々な用途に使用される紅

「紅」と言えば口紅のイメージが強いかもしれませんが、紅花から作られる紅はあらゆる用途に用いられます。
しかし、紅花は黄色い花であることをご存知でしょうか?紅花に含まれる染料の内、9割が黄色です。残り1割の赤を抽出する為には手間暇かける必要があります。
展示でも確認することができるのですが、製造工程の途中に、花びらを臼でついて餅状にまるめる工程があります。
この工程で作られた「紅餅」には1つあたり約300輪の紅花が使用されているそうです。
最初は、発酵したような独特の匂いがしますが、最終的に無臭となるそうです。見学ツアーでは紅餅も拝見することができます。
紅花
また、紅花には棘があるので、花を摘むのは朝露の棘が柔らかい内に手作業で摘むそうです。

高価な紅

このような大変な手間をかけて作られる紅は、一般人には手の届かない高価なものでした。
以前、まとめた赤の歴史記事にも書きましたが、平安時代は禁色と呼ばれ、濃い紅色は使用が禁じられていました。
江戸時代にはおいては、歌舞伎役者や遊女が紅を使用した化粧を取り入れました。
紅花の紅色は、何度も重ね付すると玉虫色になります。
そこで、遊女は唇に何度も紅を重ね付して、光沢のあるメイクを施していたそうです。現在で言う、グロスのような役割でしょうか。
花魁と言えば真っ赤な口紅をしているのかな、とうイメージでしたが、実際は違うのですね。

遊女に紅を贅沢に使用したメイクをさせることで、遊郭のアピールにもなっていたそうです。うちの店は栄えているぞ、と。
メイク道具や紅に纏わる浮世絵の展示もあり、当時の様子を知ることができました。
江戸時代にも美容本が発行されていたそうですよ!
都風俗化粧伝と言って、現在でも購入可能です。

赤の力

古くから日本では、赤色に魔除けの力があると信じられていました。
魔除けや祝いに使用された紅についても知ることができます。
雛祭りの際に出される、菱餅にも紅が使用されています。菱餅の三色は「緑色=健康、桃色(紅)=魔除け、白色=清浄」を意味しています。
雛祭り 菱餅

ツアー後に口紅を使用させて貰える!

約40分のガイドツアー後、サロンスペースで紅花から作られた口紅を付けて貰えました。
紅化粧
何層も重ね付けすると緑っぽい玉虫色になりますが、通常使用量では赤系の色です。
高価な紅を使用させて貰えるのは貴重な経験です。是非足を運んだ際は試してみてください。
下の写真をご覧ください。筆に水を含ませて、お皿の玉虫色を溶かして使用します。
紅化粧
また、美容効果の高い紅花のお茶も頂くことができました。爽快感のある後味でとても美味しいですよ。
紅花茶
企画展にもまた足を運んでみたいと思います。

色の歴史に紹介した記事も合わせてどうぞ!

伊勢半本店 紅ミュージアム

伊勢半本店 紅ミュージアムHP
※ガイドツアーの実施はHPをご確認ください。
東京都港区南青山6-6-20 K’s南青山ビル1F

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