日本の伝統色「紫」は、紫草の根を主に染料としていました。
古代ヨーロッパでは貝の内臓から紫を染色する技術が生まれ地中海沿岸地域を中心に発達しました。これは1g抽出するのに約2000個の貝を必要とし、非常に手間がかかる方法です。
ロイヤル・パープルと呼ばれ高貴な身分の人が好んだと言われています。
実は日本でも遺跡から貝による染色が確認されていますが、海女さんも貝紫を使用していたことが分かりました。
日本でも貝から紫を抽出していた!
貝紫は、日光に当たると紫色に変色する性質を持っています。
使用する貝によっても色に差があるみたいですよ。日本ではイボニシやアカニシと言った種類の貝が獲れるそうです。
しかし、日本でも貝染めの歴史は確認されたものの、主流は紫草でした。
吉岡常雄さんの著書「帝王紫探訪」によると、日本の貝はどの部分から紫が取れるのか見つけるのが難しいそうです。その上、貝の内臓には毒があり、悪臭を放つので作業も一苦労。
日本では、奄美大島、瀬戸内海、伊勢などの地域に生息する貝から抽出する事ができます。
貝染めの紫でおまじないを行った
紫色の歴史を紹介した記事「紫色の歴史・染料・価値観について – 日本の伝統色を探る – 」では、弥生時代に貝染めで作られた織物が発見されていることを紹介しました。
さらに、今回吉岡さんの「帝王紫探訪」で、伊勢の海女さんに関する記述が確認できました。
三重県の伊勢湾で漁をする海女に、かつて自分が使う手拭いに、貝から取った紫の色素で印をつける風習があったと聞き、調査に出かけた。
現在は刺繍やインクで行われいるそうですが、昔は貝染めで印を付けると悪霊が付かずに天候が悪くならないと信じられていました。
日本では古くからまじないや願掛けを行う風習がありました。その際、赤が用いられる事が多いのですが、紫もあったんですね。伊勢の海女文化はまだ健在のようです。
日光に当たると、紫に変色するという性質も相まって、願掛けに使用されたのかもしれませんね。
植物性も動物性も貴重な事には変わりない
紫草からの染色も手間がかかり、大変貴重でした。今回紹介した貝染めも1つの貝から取れる染料がごく僅かです。
どちらの方法でも貴重だった為、高貴な色として定着したのですね。
そのほか色の歴史に関する記事はこちら
参考文献
京都の染色屋「よしおか」の四代目当主、吉岡常雄さんの著書。帝王紫に魅せられて、世界中を調査する様子をまとめた一冊。日本に関する記述は一部ですが、貝染めに興味がある方には勉強になると思います。昭和58年発行の古い書籍なので、”資料のうちの1冊”と捉えるのが良いと思います。
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