【イベントレポ】市原えつこ「デジタル・シャーマニズム——日本の弔いと祝祭」

デジタルシャーマン・プロジェクト

NTTインターコミュニケーション・センター(略称:ICC)で開催された、「アーティスト・トーク 市原えつこ(エマージェンシーズ! 030 出品作家)」を見てきました。ゲストにサザエbotで有名ななかのひとよさんを迎え、お二人の作品に関するトークセッションが行われました。
当ブログは「日本文化とデザイン」の関係性をテーマにしているので、市原さんのセクションに絞ってレポートさせて頂きます。

日本文化とテクノロジーの融合

市原さんは、現在ICCで「デジタルシャーマン・プロジェクト」とう新しい故人の弔い方を提案するプロジェクトを展示中です。

市原えつこ :1988年愛知県生まれ.早稲田大学文化構想学部表象メディア論系卒業.日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解き,テクノロジーを用いて新しい切り口を示す作品を制作する.インパクトの強い作品性から,国内の新聞・テレビ・Web媒体,海外雑誌など,多様なメディアに取り上げられている.主な作品に,大根が艶かしく喘ぐデヴァイス《セクハラ・インターフェース》,虚構の美女と触れ合えるシステム《妄想と現実を代替するシステムSRxSI》,家庭用ロボットに死者の痕跡を宿らせ49日間共生できる《デジタルシャーマン・プロジェクト》などがある.2014年 文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門審査委員会推薦作品に選出,2016年 総務省異能vation(独創的な人特別枠)に採択.

市原えつこプロフィール |NTTインターコミュニケーション・センター

まず、最初に市原さんのこれまでの活動についての紹介がありました。プレゼン形式と言えばいいのか、プロジェクターに投影しながらご本人が解説をしながら進みました。
市原さんは大学時代に日本人の性に興味を持ち、「セクハラ・インターフェイス」という作品を作ります。ビジュアルは大根そのものなのですが、触ると艶めかしい喘ぎ声を上げるという斬新なもの。なんともシュールな作品ですが、どういう仕組みになっているのだろう??大根の何処を触っても声が出るのです。大学卒業後は、会社員をしながらロボットに関する業務に関わっていたそうです。

ロボットと性の融合

ロボットに関する業務を行う中で、セクハラ・インターフェイスを進化させた作品を生み出します。
その名も「ペッパイちゃん」。簡単に説明すると、pepperの胸を触ると、これまた喘ぎ声を出すというもの・笑 飽くなき性への執着が生み出したのでしょうか。

大根は良くて、pepperはNG

しかし、喘ぐpepper「ペッパイちゃん」は大炎上。まさに最新テクノロジーと文化を融合したような作品ですが、大炎上。大根は良くてもpepperはダメなのです。
ここで市原さんは「人は人型の物に感情移入する」事に気づいたそうです。
確かに。ぬいぐるみやお人形遊びでも同じことが言えそうです。

デジタルシャーマン・プロジェクト

その後、pepperを使った新たな作品を生み出します。それが今回ICCでも展示中のデジタルシャーマン・プロジェクト。
市原さんは「性」から「死」へ興味が移り、今回の作品が生み出されたそうです。

故人と過ごす49日

仏教の世界では、亡くなってから49日間は故人の魂はあの世とこの世を彷徨っていると考えられます。その49日の間、pepperを通じた故人とコミュニケーションを取る事ができるのが、今回のプロジェクト。
デジタルシャーマン・プロジェクト
見た目はpepperに3Dプリントしたお面を装着するというシンプルなもの。なので、シュール感は否めないのですが、音声は生前の本人のデータを利用しています。機械的な会話ではなく、本人の口調なので、リアリティがあります。
本プロジェクト紹介映像のラスト、49日目にはほろりとくる感動がありました。死とは、突然の別れが大半ですが、デジタルシャーマンにより、「さよなら」をする心の整理をすることができるのです。
市原さんによると、49日で消えるという設定が評価を受けたとの事でした。確かにいつまでも故人を留めておくよりも、期間を決めた方が弔いや・気持ちの整理の意味が強まりますね。

死を扱うという事

音声の収録は生前の元気な時に行わます。死期が迫っている時と、元気な時では残されるメッセージに差がでそうですが、繊細な問題に踏み込むことになるのでそう決めたそうです。

より人間らしく

このプロジェクトは今後も進化していく予定で、動きの部分でも人間性を再現することに取り組み中との事。
目まぐるしいテクノロジーの進化する時代ですから、近い将来より人間的な「デジタル・シャーマン」が実現する日が来るかもしれません。

日本の祭りを見直す「日本の“まつり”RE-DESIGN プロジェクト」

市原さんのその他の新しい取り組みとして「日本の“まつり”RE-DESIGN プロジェクト」が紹介されました。イノラボさんとの企画で、テクノロジーを用いて、日本のお祭りを再解釈するプロジェクトです。第一弾として、秋田県で有名なナマハゲが取り上げられています。
日本の“まつり”RE-DESIGN プロジェクト
こういった文化を知り、現代にマッチする形で発信する事はあらゆる分野で大切な事だと思います。
日本人にとって「性」と「生・死」と「祭り」は密接に関わり合いがあるので、市原さんがコラボレーションパートナーに選ばれたのも納得です。
なまはげ

縄文時代からの性と生

実は「性と生死と祭り」について私も考えたことがあります。縄文時代のデザインについて調べていると、バンバンぶち当たりました。
縄文時代は現代に比べ遥かに平均寿命が短い時代です。医療も発達していません。だから今よりも命が神聖なものとして扱われていました。
「性」が無いと「生」にならないわけで。そして神様に祈る風習がこの頃からあったので、性と生と神(祭り)は最も日本人が古くから行っている習慣と言っても過言ではないのです。土偶は妊婦さんを模していると言われていますし、生命に対する想いは強かったようです。中にはなぜこんなものを作ったんだろう??というものも出土されていて面白いです。
現代人目線で「奇祭」であっても昔の人は大真面目にやっていた訳ですから、その辺を調べ始めると民俗学にも詳しくなりそう・笑
今回のイベントを機に私も、日本文化とデザインの関係性をもっと追求したくなりました。そして私も何か形に残してみたいなぁ。

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